アブルニー

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「馬鹿ね、漣。あなたがそうやって悠長に構えている理由、私がわからないとでも思ったの?  ねえ、漣、あなた、どうしてそんなに馬鹿なのかしら。本当、学習能力がないのね、百年経っても、残念なくらい。 あなたが今考えていること、当てましょうか。私は神でも、超能力者でもないけれど、それぐらいはわかるのよ。こう見えて私って周りが見えている方なの。空気読めないんですねってよく言われるのだけれど、そんなこと言ってくる人を私は信頼しないわ。だって私は読んだ上で壊しているんですもの。それすらわからない人を信じることなんてできないわよね。 まあとにかく、あなたの考えていることくらい、取れたボタンを縫い付けるよりも簡単にわかるわ。ストッキングを伝線しないように履くよりも簡単よ。 ねえ、あなた、どうしてフランを捨てずに持ってるの? わかっているのよ。あるべきところ、フランを、生まれた惑星に置いてくることもせず、あなた、宇宙船の中に持って入ったでしょう。 あなたはきっとフランの力をまだ諦めていないのよね。変態の漣。あなたの諦めの悪さは七十年近く傍で見てきてよくわかってるの。それは誰よりもわかっているって自負しているわ。そんな自負、何の自慢にもならないんだけれど。
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