アブルニー

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あなたはフランを使って恋人を生き返らせる、あるいは探し出す可能性を捨ててないのよね。捨てられないの。漣ってそういう人よ。往生際が悪いんだわ。キリエに無理だと言われたのにね。 でもあなたはまだ一つ試していないことがある。そう、ジ・ギエルでもらった宇宙船の載せた半永久エネルギーよ。 それを使えば、利用する方法があれば、人ひとりが望んでも足りないエネルギー分を補うことができれば、もしかしたら恋人は生き返るかも、遠い銀河で生きているかもしれない恋人を見つけることができるかも。あなたはそう考えた。それを実践する機会を狙っている。半永久エネルギーをフランに還元できる方法さえ見つければ。あなたはそう考えている。そうすればこの旅が終わると考えている。自分の願いが叶うと思ってる。 馬鹿ね。漣、あなたって本当に大馬鹿。そんなこと、できるわけないのにね。フランが生まれた惑星を離れてまで効力があるのかもわからない。効力があってもあなたの願いを叶えることができるかわからない。半永久エネルギーを還元できる方法が見つかるかもわからない。見つかっても本当にフランがあなたの願いを叶えることができるかわからない。そもそも半永久エネルギーだって必要なエネルギーとしては不足しているかもしれない。 そういう可能性を全て除外して、自分の願いの成就だけを盲目的に考えるあなたは本当に馬鹿よ。視野が狭すぎて研究者失格だわ。同じ研究者として恥ずかしいもの。 ねえ、そろそろ諦めたら? 地球は消えたの。あなたの恋人は死んだのよ。生命を蘇らせる方法はないの。あなたの恋人を蘇らせる方法はないのよ。あなたの恋人を、あなたが愛した恋人のまま創り出す技術だってないの。 わかっているでしょう? 地球以上に文明を発達させた惑星なんてごまんとあったけれど、どこもあなたみたいに馬鹿な考えはもってないの。不可能だと知っているからよ。あなただけ。不可能に縋りついているのは漣だけなの。 どうしてわからないの? そんな風だと、死んだ恋人に呆れられるわよ。死んだご両親にだって笑われてるわよ。漣をこんな風に育てた覚えはないって、泣いているかもしれないわ。親不孝者ね。恋人の顔が見てみたいわ」
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