アブルニー

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 疑問がつきない。疑問は流砂のように私の中を流れて積もり、出口を埋める。答えを全て呑み込んでしまう。  彼の寿命は、彼にとってなけなしのものだ。彼は死ぬまでに恋人に会う為に生きている。  恋人に会う確率や可能性を考えれば、地球人の寿命ではとても足りないくらい、彼は寿命を欲している。若返りの星で彼はボーナスチャンスをもらった。それをとても大事にしているのだ。  その寿命を、どれだけ削られるかもわからないのに、私の為に使った。全く合理的ではない。  思考を巡らせているうちに、漣の宇宙船の元まで辿り着いた。  私達を降ろした宝石もどきは地中へと帰っていく。彼の願いは宇宙船に辿り着くまでだったのだろうか。大分寿命が削られたんではないだろうか。それは私の本意ではなかった。 「珍しいね。ずっと黙ってる。レックスといたかった?」 「そうね。そうかもしれない」 「レックスは、君のことを本当に好きだったよ。彼の親友の僕が言うのだから、間違いない」 「知ってるわ」そんなことぐらい、知っている。彼の態度は、いつも紳士だった。いつも誠実で、真っ直ぐだった。 「助けない方が良かった?」  漣の表情が珍しく不安げだった。そんなことないと言いたいのに、それを見てまた泣きそうになる。本当に私はどうしたのだろう。こんなに不安定になるのは初めてで、どうしたらいいのかわからない。 「わからないわ。こんなにわからないこと、初めてよ。他の人たちはこんな時どうしているの? どう処理しているのかしら。諦めるの? 考え続けるの? 仮の答えを出して満足するの?」  頭の中が沸騰しそうだった。こんなことは初めてだ。どんな難解な数学の問題だってこんなに悩んだことはない。こんなに吐きそうなぐらい悩んで苦しんで、それでも人は悩み続けるのだろうか。  どうして、そうやって、生き続けるのだろう。 「わからないけれど、答えなんてないんじゃないかな。でも、迷いながら、それでも進んでいくんだ。何が正しいとか、何が必要とか、何が綺麗とか、誰にもわからないから。だから、信じて、迷っていることも受け入れて、進んでいくしかない」 「あなたの言っていることは難しいわ、漣」 「ね。僕も自分が何を言っているかわからない。なんとなく、人にはこんなに偉そうなことを言っておいて、自分は何にもできないくせに、なんて思いはあるけれど」 「あなたが偉そうなのはいつものことだから、そこは気にしなくていいと思うわ」 「どうもありがとう。その言葉そのままお返しするよ」 「返さなくていいわ。いっぱい持ってるもの」
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