アブルニー

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 大激論の末、私は漣の宇宙船に乗ることになった。  フランを使って宇宙船を取り戻すと言ったのを、漣が止めたのだ。おそらく、かなりの寿命を削ることになるからだろう。  それはつまり、今回かなりの寿命が漣から削られたのを意味する。私も何度か借りて使ったことがあるからわかるが、はっきり何年寿命が削られたという数字は出なくとも、使用時の疲労具合でなんとなくどれだけ寿命が減ったかわかるのだ。  きっと、漣は今疲れ果てているはずだ。それでも、彼は私を救いに来てくれた。  地球人の平均寿命は百歳で、私達は若返った分、順調に行けば百六十年は生きていける。  それでも、有限なのだ。  この短い時間を、彼が恋人に再び会えるよう、使わなくてはならない。  どうやって使うのか。  答えはわからない。  きっと、答えなんて、ない。  ないけれど、信じて進むしかない。  迷いながら、進むしかないのだ。  きっと。
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