地球

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 それに完璧主義なのかと思っていたが、全くそういうことはなく、むしろ面倒臭がりのようだとわかったのは、宇宙船で移動中研究を手伝ってもらっていた時にテーマの内容を精査もせずに実験を始めたことがあったからだ。  彼女曰く「私の直感は九割当たる」ということだった。だからテーマを見て良いと思えばそれで大丈夫なのだそうだ。  残りの一割に当ったらどうするのだろうかと思ったけれど言わないでおいた。  確かに彼女の言う通り大体は彼女の直感通り事が進んでいたし、彼女の協力で研究の進度が格段に上がったので機嫌を損ねたくなかった。僕が何を研究しているのかについても、彼女は理解していて、殺されるのではないかと思うぐらいの視線を投げかけられたけれど、何も言わないでいてくれた。そういう優しさも少しは持ち合わせているらしかった。 「漣、見て」  操縦席で次に行く惑星を直感で決めると言っていたリサが戻って来た。宇宙船に同乗するようになってからというもの、行く先はリサが決めるようになっていたのだ。リサがやりたいと言い出したことだったが、自分が決めるよりもその方が良い結果に繋がりそうだったので承諾した。  無言のリサが睨んでいる。朝と睡眠時以外でこれだけ口数が少ない彼女を見るのは珍しい。  僕は険しい表情の彼女が持っていたタブレットを覗き込む。そこには宇宙船の軌道と、その先にある惑星が映っていた。 「これ、本当なの?」  僕の言葉に、彼女は頷く。  頷いて、にやりとした。その表情の意味が僕にはまだ理解できない。理解する余裕などなかった。  もう一度タブレットの中を覗き込む。もどかしくて彼女からそれを奪い取った。    タブレットの中の情報が間違いではないことを自分の中で暗算して確かめていく。計測値が間違いではないことを確認していくと、だんだんと興奮が高まり、手が震え、今度はタブレットを持っていられなくなり、リサに押し付ける。  彼女はいつもみたいに僕の行動を罵ったりしなかった。
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