地球

11/27
前へ
/109ページ
次へ
 彼女は厳しい。  それはきっと、優しいからなのだ。  それを理解していても、彼女の優しさは僕を苦しめる。  その時、タブレットが光った。ドローンの映像が映っていた画面が切り替わったのだと思った。画面が真っ白になっている。故障だろうか。叫びながら、力を入れ過ぎたかもしれないなどと思っていたら、リサが覗き込んできた。白い画面を見ながら「やっぱり私の直感は当たるわね」などと呟いている。  見ていると、画面に文字が現れた。  『さざなみ』とひらがなが現れ、続いてそれが変換される。僕はその様子に魅入った。  漣。  久しぶり。変わらないね。  まさかまた会えるなんて、思ってもいなかった。  元気そうで良かった。  タブレットに音もなく文字が入力されている。リサを見つめる。私は何もしていないわよと言うように彼女は両手を挙げた。彼女のいたずらではないらしい。  私は春風だよ。  わかるかな?  漣は変わらないからすぐにわかった。でもちょっと痩せた?  もしかしてまだ研究に没頭してご飯食べるの忘れる癖抜けてない?  駄目だよ、ちゃんとご飯食べなきゃ。 「あら、さすが恋人ね。漣のことよくわかってるじゃない。やり取りだけ見ていても彼女の方がしっかりしていて、あなたが尻に敷かれていたのがよくわかるわね」  リサの軽口が、今はとても温かく感じた。何が起こっているのかはわからないが、今文字を入力しているのはハルなのだと、僕のなけなしの直感がそう言っている。
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加