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彼女は厳しい。
それはきっと、優しいからなのだ。
それを理解していても、彼女の優しさは僕を苦しめる。
その時、タブレットが光った。ドローンの映像が映っていた画面が切り替わったのだと思った。画面が真っ白になっている。故障だろうか。叫びながら、力を入れ過ぎたかもしれないなどと思っていたら、リサが覗き込んできた。白い画面を見ながら「やっぱり私の直感は当たるわね」などと呟いている。
見ていると、画面に文字が現れた。
『さざなみ』とひらがなが現れ、続いてそれが変換される。僕はその様子に魅入った。
漣。
久しぶり。変わらないね。
まさかまた会えるなんて、思ってもいなかった。
元気そうで良かった。
タブレットに音もなく文字が入力されている。リサを見つめる。私は何もしていないわよと言うように彼女は両手を挙げた。彼女のいたずらではないらしい。
私は春風だよ。
わかるかな?
漣は変わらないからすぐにわかった。でもちょっと痩せた?
もしかしてまだ研究に没頭してご飯食べるの忘れる癖抜けてない?
駄目だよ、ちゃんとご飯食べなきゃ。
「あら、さすが恋人ね。漣のことよくわかってるじゃない。やり取りだけ見ていても彼女の方がしっかりしていて、あなたが尻に敷かれていたのがよくわかるわね」
リサの軽口が、今はとても温かく感じた。何が起こっているのかはわからないが、今文字を入力しているのはハルなのだと、僕のなけなしの直感がそう言っている。
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