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「ハル、教えてほしいの。地球は一体どうなってしまったの? 私達は月で研究をしていて、気付いたら音もなく地球は消えてしまったわ。そして漣と一緒にあなたを探してここへ辿り着いて、でも人間は誰もいない。なぜなのかしら」
画面は暫くの間、変化がなかった。駄目だよ、ちゃんとご飯食べなきゃという文字が浮かび上がったまま何も起こらない。僕は頭に焼き付けるようにして画面に見入っていた。
私が説明します。
突然、画面が切り替わった。寂しさが襲う。先程の画面を保存しておけばよ
かったと後悔する。
「あら、違う人が出てきたわね」
リサが言う。どうしてそんなことがわかるのかと訝しがるが、その先の文章を読んでいくと、彼女の言い分は正しいことがわかった。ハルでは出てこない専門用語が沢山出てきたからだ。
その人の説明によると、ほぼリサの推測と正しいということだったが、付け加えるならば、ブラックホールに吞まれ、放り出された時には人間や動物達の身体は解けていたということらしかった。
解けるというのは、死んだということではなく、むしろ縛りつけるものがなく、意思を電波のように、自由に世界中を行き来できるようになったということだと彼らは言った。
「確かに、身体は邪魔よね。身体があるせいで動きが制限されるもの。色んな無駄も生じるし、ない方が絶対合理的だわ」
リサは感心したようにタブレットの話を読んでいる。僕は徐々に現実を理解し始め、理解でき始めると、心の中で寂しさの小雨が降り、隙間に浸透していき、全身を巡り、それが涙となって出てきた。
それに気付いたのは、タブレットに『泣かないで、漣』という文字が入力されたからだ。
ハルが心配しているのだと思った。どこから見ているのかわからないが、ハルは間違いなく存在し、僕を見ていて、そして電波のような思考となって、タブレットに想いを入力しているのだ。
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