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リサはどこへ行ったのだろう。
一度宇宙船に戻ってみる。ざっと探してみたがいなかった。一応僕の指紋以外で運転できないように操縦席をロックしておく。万が一彼女がどこかに隠れていて、僕が宇宙船から出て行った後に一人で飛び立ってしまうのを防ぐ為だ。
宇宙船から一旦降りる。持っていたタブレットを操作して、ドローンで彼女を探せないか試してみた。しかしこちらは先回りされたのだろう。彼女の指紋がないと操作できないようにロックされていた。残念と思う以上に驚きと焦りが生まれる。
僕がドローンを使えないような設定に彼女がしていたということは、彼女は僕に探し出されないようにしたということだ。彼女が何も考えずにそういう設定にしていたという可能性もなくはない。だが、これが偶然とはどうしても思えなかった。フランを抜き取ってというのも、フランを使って僕に探し出されないようにするためではないのか。
なぜ彼女はこんなことをするのだろう。思考がそこに飛びそうになるのを必死で食い止める。
今こんなことを考えている暇はない。彼女が本気で僕から離れようとしているのであれば、まずは探し出すことだ。僕はまた宇宙船に戻った。船の観測測定システムで彼女の位置を割り出そうと思ったのだ。
地球上の全てのものは時を止めている。彼女は徒歩で移動しているはずだ。だとすれば、移動距離は限られている。そう遠くはないはずだ。観測システムの有効範囲は限られているが、数キロ圏内であれば移動している物体を割り出せる。そう考えたところで、自分の間違いに気づき、頭を掻きむしる。
船の観測システムは電波を利用している。周波数の違いで様々なものを測定しているのだが、今、地球上では、およそ七十億の思考が飛び交っている。思考は電波に酷似している。タブレットの中で会話できたのもそのせいだ。
おそらく船の観測システムではエラーが出るだろう。
試しにやってみる。
残念ながら推測通りの結果となった。
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