ぶっ飛んだ青春

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それから2人は、 高校最後の1年を過ごした3年3組の教室に入った。 「最後の席、どこだったけ?」 と言うみつきに 「全然覚えてないや、もう」 と私は苦笑して答える。 「もう10年前だもんね~」 “10年前” その言葉を聞いてゾッとした。 夏帆とみつきは28だ。 あの青春の象徴とも呼べるセーラー服を最後に着た日から、いつの間にか10年という時間が過ぎていた。 遠い昔のことのようでいて、つい最近のようでもある。 でも今、地下鉄でスマホを見ながらキャッキャ言っている女子高生を見ると、 自分とは違う生物であるかのように、大きな隔たりを感じることがある。 自分にも、あんな風に箸が転んでもおかしい年頃が本当にあったのかだろうか。 夏帆は、窓際の席に座った。 「こっから見える景色は覚えてる。授業中、好きだった人の体育の授業の様子とかよく見てたから」 窓の外にはグラウンドが広がっている。 夏帆の高校では、1学年は4階、2学年は3階、3学年は2階と進級するごとに教室の階が下がっていく。 どの学年の教室でも、高さは違うものの窓からはこのグラウンドの景色が見えた。
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