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1階には、吹奏楽部の合奏の時に使用する音楽室がある。
今日は部活が休みなのか、音楽室は施錠されていた。
「私たちの代は、休みなんかなかったのにね」
みつきは少し残念そうに言った。
「まぁ、顧問もかわってるし後輩も誰一人知らないわけだから、私たちが顔出しても完全にアウェイだったと思うけどね」
そう言って、夏帆は楽器庫の方に向かってみた。
音楽室の正面には階段があり、
その階段のコンクリートの分厚い壁に隠れるように楽器庫はあった。
壁と壁の間に挟まれる形で存在するこの楽器庫の前には畳2枚分ほどのスペースがあり、
ここでよく基礎打ちの練習をしていた。
階段を通って下校する生徒からは壁が邪魔して、こちらの様子が見えないようになっている。
この隠れ家的スペースを夏帆は気に入っていた。
夏帆は楽器庫のドアノブを回してみる。
案の定、鍵がかかっていた。
諦めてそこを立ち去ろうとしたとき、
コンクリートの壁に手が触れた。
ひんやりとした感覚が指先から伝わってくる。
その瞬間、忘れかけていた記憶が夏帆の脳裏に蘇ってきた。
10年以上前のあの夏、
夏帆はここでコンクリートの壁に体をくっつけて涼んでいた。
仁先輩と一緒に。
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