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 タカシは心臓が止まりそうなほど驚き、ベンチから飛び上がった。 「「「にゃ〜〜」」」  また聞こえた。  どうやら一匹ではないらしい。  近くにいるのかと思い周辺を探してみるが見つけられない。 「「「みゃ〜〜〜!」」」  次第に猫の鳴き声が大きくなる。  あたかも「どこ探してんだよ! ここだよ! 早く見つけろよ!」とでも言っているかのように猫の苛立ちが伝わってくる。 「なんだよ、俺悪いことしてないんだけどな」  そう言いつつも、一段と大きな猫の鳴き声が聞こえた方を向くと、そこには先程まで腰掛けていたベンチがあった。 「あれ?さっきここに座ってたよな?」  そう思ってよく見ると、ベンチの下にダンボールが置いてある。 「まさか」  そう思ってダンボールをベンチの下からひきづり出して中を見てみると。 「「「にゃ〜!」」」  やっと見つけやがったなと言いたげな3匹の子猫がタカシの顔をまじまじと見つめていた。 「うお!」  それは猫好きなタカシにとって少々刺激の強い光景であった。  ただでさえかわいい子猫が3匹も、しかもダンボールを開けた途端にこの光景である。不意打ちである。  昇天しそうな頭の中を冷静に保とうとするが、6つの純粋な眼がそうさせない。  いまにも子猫を抱きかかえて撫で回したい衝動に駆られてしまう。 「だけど……」  子猫に触れてしまえば何を意味するかを、猫好きであるが故にタカシは十分に理解していた。  それは、タカシに3匹に対する責任が発生してしまう事を意味する。  自立できていない、他人に支えられてかろうじて立っているちっぽけな自分が、この3匹の責任など持てるはずもない。  自分よりも誰かに拾ってもらった方がよほど幸せになれるに違いない。  そう考えると、高揚していた気持ちも抑えられ冷静になってくる。 「ごめんよ、俺じゃ君達を幸せにできない。」  そうしてダンボールを元のベンチの下へと戻し、タカシは再び激坂を登っていくのであった。
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