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「……ただいま」
学校を終えて家路に就き、誰もいない家に声をかける。
もちろん返事があるわけもなく、しんと静まり返っていた。
そこに温かみは一切なく、ひんやりとした空気が漂っているだけだった。
まるで人が住んでないような、生活感らしきものもあまりない。
それもそうだ、ここに帰ってくるのはほとんど自分だけだから。
家が大きくても立派でも、親が華やかな世界の人間でも。
温かさも優しさもなにもかもないんだ、……昔からずっと。
「はー…」
私はため息をひとつ溢して、ローファーを脱ぎ捨てる。
そんなことをしても、叱ってくれる人なんていない。
それが楽な反面、どうしようもなくつらくて寂しくて悲しくてたまらない。
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