ほろ苦アフォガード

2/25
117人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
「……ただいま」 学校を終えて家路に就き、誰もいない家に声をかける。 もちろん返事があるわけもなく、しんと静まり返っていた。 そこに温かみは一切なく、ひんやりとした空気が漂っているだけだった。 まるで人が住んでないような、生活感らしきものもあまりない。 それもそうだ、ここに帰ってくるのはほとんど自分だけだから。 家が大きくても立派でも、親が華やかな世界の人間でも。 温かさも優しさもなにもかもないんだ、……昔からずっと。 「はー…」 私はため息をひとつ溢して、ローファーを脱ぎ捨てる。 そんなことをしても、叱ってくれる人なんていない。 それが楽な反面、どうしようもなくつらくて寂しくて悲しくてたまらない。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!