2 気になる理由

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「アホ。オトコだよ、オトコ! 遠野なんとかって一年のオ・ト・コ。めちゃくちゃ調子悪そうだったんだから、俺じゃなくても気にするって」  うん、そうだ。やっぱりそれだけだ。野田と肩を突き合い、じゃれながら話しているうちに冷静になれてきた。  けど。  「一年の遠野? それって色素の薄そーな女顔の奴?」  出し抜けに涼介が言って、クールダウンしたはずの頭にピン、と電気が走る。 「……知ってるのか?」 「中学んときの同級生。中三の夏に病気で入院してそれから学校に来てなかったんだけど、今年からこの学校に入学してるって聞いたんだよ。なんとなく会いに行くタイミングもないままなんだけど……まだ体、良くないのかな」 「なんの病気」と聞こうとしたところで予鈴が鳴る。野田が話に糸目をつけない様子で自分の席へ戻って、俺と涼介はなんとはなしに目線を合わせたけど、開きかけた口を閉じて、同じように自分の席に戻った。  遠野。本当は同い年。病気……俺の頭の中に、再び遠野の残像が浮かび上がる。熱を帯びた肌と、汗が伝うか細い首。触れた手と頬の滑らかさ、そして、甘い声。  ドクドクドクドク……  ────ああ、また心臓がうるさい。なんだってこんなふうになる? 俺は一体どうなってるんだ……。
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