12・現実

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「あっ?」  しかしその腕は空を切るだけだった。 「レイ君・・・ううっ、会いたかったよ・・・」 「美月・・・ごめんね。うっ、本当にごめんね・・・」 「私これから、どうしたらいいのぉ・・・ううっ」  その時ヒガチンが僕の横に来て突然右ストレートを喰らわせた。 「イテッ! 何するんだよ!」 「レイ、彼女を抱き締めてやれ・・・」 「えぇ?」  不思議なことに生きていた時と同じ感覚が蘇った。僕は美月に触れてみた。あっ、(さわ)れる! 迷わず美月を抱き締めた。 「レイ君! レイ君! うあぁあぁああ~ん!」 「美月~っ! うああぁあああ~っ!」  僕たちはしばらく抱き合って泣いた。涙が枯れ尽くすまで泣いた。 「レイ、行くぞ。彼女の記憶をまた消す・・・」 「消さないで!」 「あん? あんた俺の声が聞こえるのか?」  美月はヒガチンを見ていた。 「レイ君を忘れたくない・・・。だから消さないで・・・。私はもう大丈夫だから、お願い、消さないで・・・!」 「うっ、」 「ヒガチン、美月は大丈夫だ。強く生きるよ」 「美月、さようなら。僕たちは再び巡り会えた。だから次の人生でも必ず君を探しに行くから、それまで待っていてね。ずっと見守っている」  徐々に美月の肩を掴んだ手が透けてきた。 「レイ君、私の青春と思い出をありがとう。私の旦那さんになってくれてありがとう。あなたとの日々を胸に頑張って生きる・・・! 心配しないでね。私が迷っている時は助けてね・・・。愛してる・・・永遠に」 「うん、僕も永遠に愛し続けるよ・・・。さようなら・・・美月」  涙に暮れながらも微笑む美月を背に、僕とヒガチンは長いロードワークへ駆け出した。きっとまた会える。そう信じて光の中へ駆け出した。  了
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