2・出逢い

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2・出逢い

 学校では無視されているような疎外感は拭えないけど、朝からの爽快感は続いている。こんな夜は出無精の僕でも出掛けようかと思った。  チャリで市内まで行ってみよう。何かいいことがありそうだ。軽快に飛ばせる。スピードが恐くない!  夕食を「お一人様」でお洒落なイタリアンを食べてみようかな。一人で行くのは食堂とラ―メン屋と牛丼屋だけだと思っていた。これは僕の人生の中の失敗だったと今日気が付いた。全然OKだ。誰も変な眼で見ていないじゃん。フルコースで注文してやったよ。夕食だけのコースだ。まぁ、だからディナーコースって言うんだけど。  あそこの親子は常連さんっぽいな。きっと仲のいい母と娘なんだろうな。娘さん可愛いな。僕と同世代くらいかな。ちょっとトイレ行くフリして近付いてみよう。お一人様だもん、誰も咎めないし。 「美月、大好きだったじゃないマルゲリータ」 「うーん・・・」  名前が分かった。「ミズキさん」だ。どんな字を書くんだろ? それにマルゲリータ・ピッツアが大好きなことも分かっちゃったぞ。いきなり収穫だ。街に出ただけで、こんなささやかな幸せを感じられるんだな。うちの学科じゃ彼女なんて望めないけど、こうやって人のいるところに乗り込まなきゃ何のきっかけも無いよね。当たり前だけど。
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