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形容しがたい気持ち
-キーッ-
重い木の扉は、ほとんど音もなく、重厚に開いた。
最後に開けたのは、たしか二十歳の時だったろうか。もう四年も前だ。
所謂"イッキ"をさせる為のゲームを、酔って気分が良くなったあの人と、偶々飲みにきていたタチの悪い半グレ集団が………
結局巻き添えを食った僕は、命からがら逃げ出し、それから先はトラウマになってしまい、目の前を通るのさえ避けていた。
階段を一歩ずつ踏みしめると、思わず嗚咽が漏れそうな口を抑えながら、トクトクとはやる鼓動が、何故だか周りに聞こえてはいけないような気さえしていた。
そんなに長いわけでも無いのだが、永遠のような、一瞬のような……
「…よぅ…待ってたぞ…」
登った先のカウンターの端であの人は、優しそうで、血の通ってない笑みを浮かべていた。
ただ、
一つ不可解な事があった。
隣に、見知らぬ、思わず気の緩むような微笑みの、熱血漢といった風貌の男を、従えていたのである。
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