その先にあった幸せ

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「ありがとう。ほら和泉、これを見て」 瑠生兄がストライプのパンツのサイドポケットから 何かを取り出し私に渡す それは四角いリングケースだった 「これって…?」 驚く私に 瑠生兄は急かすように 「いいから早く開けてごらん」と促す 私はそっとリングケースを開けた 「え! なんで?」 私はその指輪に目を見開く その指輪は 京都の簪店で 私が一目惚れした ヴィクトリア時代のダイヤとエメラルドの指輪 でもこれを私が欲しがっていたことを なんで知っているの? 驚いたままの私に 「和泉と京都に髪飾りを買いに行った時  俺が会計している間  和泉がなかなか奥から戻って来なかっただろ  俺が気にしていたら  店主が教えてくれたんだよ  和泉が奥で見ているのはこの指輪だって  その前に来た時にも  欲しそうにずーっと見ていたって  なかなか居ないんだってさ  ガラスケースの前で20分も見てる人って笑  だから、後で買いに来ますからって  取り置きしておいて貰った  美和子の店の後、  また簪屋に戻って買ったんだよ  そのせいで和泉を40分も  寒い外で待たせることになってしまったけど」 瑠生兄はあの時のことを思い出したのか 「ごめんね」と私の頭を撫でた
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