その先にあった幸せ

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「でも、あの時瑠生兄は私のこと  妹としてしか見ていなかったのに  なんで買ってくれたの?」 私はそこが不思議だった 「なぜかな?    和泉に買ってあげたいと思ったんだ  きっと和泉、喜ぶだろうなあって    でもその後、こんな高価な指輪  普通、妹に買わないよなあって  気づいて焦った    その頃から  もう俺にとって和泉は特別な存在だったんだな」 瑠生兄が照れたように笑う 「本当に?嬉しい。ありがとう  私には手の届かない指輪だって諦めていたから  それをまさか、瑠生兄が買ってくれて  こうして今私に贈ってくれるなんて  夢のようで・・・」 そう言いながら涙がぽろぽろと溢れた 瑠生兄は両手で私を抱きすくめ 私の頬に自分の頬を寄せ囁く 「良かった… 和泉がこんなに喜ぶなんて  俺の方こそ嬉しいよ」 リングケースから指輪をとり 瑠生兄は私の左手の薬指にそっとはめてくれた サイズはぴったりだった 指輪の石が太陽の光でキラキラと光る 「幸せになろう、和泉」 「はい」 私達はそっと唇を重ねた 誓いのキスは涙と潮風の味がした
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