カフェの娘

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カフェの娘

早朝はまだ初夏の日差しも緩やかに草木を照らし ほのかに香る庭のライラック 時刻は7時半 テラスのラタンチェアに座り 庭のホプシーを眺めながら コーヒーを飲む日課は 今も続いている…はずだった 「和泉〜!こちらテラス席1番テーブル  酒井さんのとこ、よろしく」 母のやけに元気な声で 私のコーヒータイムはあっけなく終わる 「お母さん!私はスタッフじゃないって  何度も言っているのに!」 カウンターの中で 忙しくコーヒーを煎れている 母の前に立つと いきなり、ブレンドコーヒーのカップが 5つ載ったトレーを渡される 「仕方ないでしょ、  バイトの関君が風邪引いちゃって  休んでいるんだから  ほら、早く持って行って」 しぶしぶ、 テラス席に座る 御近所のおじいさんグループのテーブルに向かう 「おっ!和泉ちゃん、  とうとう手伝うことになったの?」 酒井さんはご近所で 習字教室を開いている70歳のおじいちゃん その教室に通う同年代の 仲良し5人グループは 毎朝、公園のラジオ体操の後 うちのカフェに寄って コーヒーを飲むのが日課だった 「違うの、今日は関君が休みだから  母が勝手に私を使っているの」 困ったものだと嘆いていたら 「和泉!カウンター席のお皿片付けて!」 母親の声がまた響いた
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