これより三役

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オウノ王子は一旦、ホテルに戻る。調査は午後に出直しだ。テレパシーで本国に居るミタ王女と通信する。 『お姉様、何キロほど痩せませたか?』 『弟だろうとレディーに体重を聞くんじゃねえよ』 『お姉様! ヨコヅーナ王国の未来が懸かっているのですよ!?』 『カドバーン王国の者はパパの死を知ってるの?』 『それは話題にならなかったので、知らないと思います』 『そう。当面はママが国家元首よ。カドバーン王国の男どもは使えそう?』 『それが…………、お姉様の写真を見られてしまいました』 『バカ!』 『すみません。でも、カドバーン王国第2王子、シナウス殿が妹のアサノに興味を持ってるようです』 『この際、チビ同士で政略結婚してもらうか。私には、カドバーン王国の王家のイケメンを紹介しなさい。条件わぁ~、長身でぇ~、イケメンでぇ~、国家レベルの金持ちでぇ~ーー』 『お姉様、通信が途切れそうです。また後で』 プチッ。オウノ王子は半ば強引にテレパシーを切る。そして、ひと休みするためにルームサービスを頼む。昼食だ。 ーーその日の午後、カミウスは城内の裁判所に出向く。司法の副判事を務めているからだ。今日の裁判は一件のみ。教育虐待をした親に対し30歳の子供が訴えを起こした。 カミウスはハゲ散らかった髪の毛を颯爽となびかせて大法廷の裁判官席に座る。他14の判事も席に着き、原告と被告も入廷してきた。傍聴席は半数ほどが埋まっている。 「原告側、被告側、準備はよいですか?」 そう判事が告げる。双方の弁護士は準備できてると答える。 裁判が始まった。判事はまず、原告側の言い分を聞く。 「原告側、どうぞ」 「はい。原告の弁護士として発言します。今どき、教育虐待など過去の遺物。被告、両親には極刑を望みます」 「調書を見ると、極刑が妥当ですね」 すると、被告の父親は吠える。 「誰のお陰で飯が食えたと思っている!? いい加減にしろよ!?」 「静粛に。調書によると被告の両親は原告の子供にホーケー拳の道場に通わせることを強制したようですね」 ホーケー拳とは、ホーケー民国の軍隊に正式採用されている拳法。粗チンを武器に相手にネチョネチョさせる恐ろしいハラスメントコマンドーだ。 次は母親が涙ぐみながら喋る。 「子供を一人前にしたかった。それだけです」 判事は驚きを隠せない。 「正気ですか、被告人? ホーケー拳を覚えたところで人間性も強さも鍛えられませんよ。あなた達、在カドですか?」 「はい。在住カドバーン王国のホーケー民です」 「極刑に決定! カミウス様、よろしいな?」 「異論ありません」 それを見ていたオウノ王子は傍聴席から出る。コトオーに促されて。
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