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ーーヨコヅーナ王国暫定国家元首、ホワイト・ヨコヅーナ女王は、偵察に向かわせたオウノ王子から聞き取りをして、ミタ王女とアサノ王女をカドバーン王国へ送り込む。後ろ髪を引かれる思いのアサノ王女とは対照的にミタ王女は乗り気だ。縁談の相手が160キログラムのデブメガネとも知らず。
馬車の中で姉妹は無言だ。仲があまり良くない。ミタ王女は、美人で可愛くて若いアサノ王女にジェラシーを感じていた。自分はデブサイク。〝認めたくないものだな。自分自身の不摂生ゆえの過ちというものを〟
ミタ王女は馬車の中で甘ったるいドーナツを噛りながら甘ったるい炭酸飲料をがぶ飲みする。類は友呼ぶだ。
アサノ王女はレースのグローブを陽に透かしてみる。政略結婚の相手、シナウス・カドバーンとはどんな人物なのか。不安が募る。
ーー2人の王女を乗せた馬車は例の橋に差し掛かる。豪雨で陥落したが、再建されていた。馬車が通るとギシギシと揺れる木製の仮橋だ。
馬車は無事にカドバーン城に着き、2人の王女は降りる。すぐさま、コトオーが出迎える。
「ようこそ、カドバーン王国へ。お疲れでしょう」
「疲れてない。早くカドバーン公爵の元へ案内しなさい」
「はっ! お相手は城内、玉座の間に居ます。着いて参られい」
ミタ王女の偉そうな態度に、コトオーは嫌な顔一つせず、案内をする。
玉座にカネウスが座っており、隣にシナウスとゴウが立っていた。
「カネウス・カドバーン国王、ご機嫌麗しゅう」
ミタ王女はとりあえず挨拶した。
「よくぞ参られた、ミタ殿とアサノ殿。ソルトの事は残念だったな」
ミタ王女は辺りをキョロキョロする。カネウス以外にデブ(ゴウ)とチビ(シナウス)しか居ない。
「あの~。私のお相手は…………?」
ゴウがブヨヨンと跳ねる。
「俺の名は、ゴウ・カドバーン公爵! ミタ王女、安心しろ。俺はデブ専ブス専だ」
「デブメガネに用はない。さあ、私のお相手は?」
カネウスは、ミタ王女を諭す。
「このゴウがそなたの結婚相手だ。ゴウはカドバーン族一の大魔法使い。ミタ殿、ゴウをもらってやってくれないか」
「嫌よ! 話が違うじゃない! 私は男に妥協したことないの! イケメンでぇ~、包容力があってぇ~、長身でぇ~、国家レベルの金持ちでぇ~」
「男に相手にされたことがないだけだろ」
シナウスはチクりと刺した。
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