夏の夜。

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「――後は……武術や学術へ物申す事は一切ありませんでしたわ、優秀です。帝のお立場では、其れが何をおいても一番となりますし……集中力が、人並み以上に御座いましたね」  更に、祭の口が語ったのは一刀の長所であった。錦は其の話題に、笑顔を見せる。 「うん。一刀って本当に凄いんだ。初めての事も直ぐに覚えてしまうし、何でも出来るもの。あんな御方は、そうはおりませぬ」  まるで、己の事の様に話し微笑む錦へ、祭は一瞬声を失った。が、僅かに口元が緩んだ。そして、再び咳払いをし、話を続けねばと。 「其れなりに、女子(おなご)にも男子(おのこ)にも支持がありましたが……」  次の話題に、錦は複雑そうな表情で俯く。あまり、聞きたくは無い話題だ。 「そ、其れは、そうだろうな……」  少し笑ってみるも固い笑顔。祭は、そんな錦を一瞥した後、又溜め息を漏らした。 「でも、其のお好みが何とも贅沢で」 「贅沢?」  首を傾げた錦へ、祭は思い切り息を吸う。 「美しいは絶対条件更には慎ましく可愛いらしく教養深く聡明で純真で色白なら尚良し……と、こう来ました」  早口に、一刀の理想とやらを一息で言ってのけた祭。錦は、其の語る条件ひとつにつき、少しずつ空いてしまった口が其のままだ。何と、本当に贅沢だ。しかし、一刀程の者であるなら、其処迄を望む資格もあるのかも知れないがとも。
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