夏の夜。

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 次に来た問いは脈絡も無く、一刀は即答出来ずに戸惑いを見せた。取り敢えず、己は知らぬと。 「祭……?女官の全ての名を把握してはおらぬが……薊、居るのか?」  薊へ助け船を求めるが、薊の表情にも困惑が見える。 「私の記憶には、おりませぬが……小夜?」  薊が把握してないと言う時点で最早決定的なのだが、一応と小夜にも訊ねられた。 「おりませぬ、と思うのですが……」  小夜も困惑気味に答えた。錦は、今一度箱の中で微笑む雛芥子へ目を向けた。そして、再び一刀、薊、小夜へ。 「じゃ、じゃあ、祭殿という御名前に何か、心当たりとか……?」  互いに視線を送り合い黙り混む。此の反応で、答えは出ている。しかし、此処で何かを思い出した様に、口を開いた一刀。 「そう言えば俺の中では、叔父上の娘で母方の従姉妹の名だ。だが、お前は会った事が無いだろう……?」  一刀は不思議そうに錦を見る。確かに、一刀の叔父へは会った事はあるが、其の子にはまだ面識は無い。 「叔父上の、御子……お、お年は……?」  念の為に確認をするが。 「確か、まだ十代の半ば程か……一体どうしたと言うのだ、先程から」  ならば別人だ。そもそも、此の御所の後宮へ、誰にも知られず忍び込む等不可能だ。万が一忍び込んだとして、其の様な者の目的が后妃とのお喋り等である筈が無い。錦は、一刀を見詰める。
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