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「あ、あの、一刀……」
煙管を手にし出した一刀の袖を、錦が遠慮がちに摘まんだ。
「何だ」
「ゆ、幽霊とかあやかしとかってさ、信じる?」
突然、脈絡の無い問いかけに目を丸くした一刀。
「何だ、いきなり……」
少し気まずそうに俯く錦は、何やら落ち着かない様子だ。
「ほら、こういう季節だろう?何となく……」
一刀の錦への心象では、こういった類いに興味があるとは意外であった。しかしまぁ、問われたので。
「俺自身は目にした事等無いが、其の存在を否定しようとは思わぬ」
正直な処を答えてやった。錦は、そんな一刀の答えに僅かに身を乗り出す。
「し、信じる派?」
「何方かと言われると、そうなるな」
確かに一刀は見た事も、感じた事も無い。しかし、そういう話を耳にする機会はあるのだ。であるならば、己が見えぬだけでそういう者達も又存在しているのだろうと。
「一刀が信じるんなら、やっぱり、いるのかなぁ……」
錦が、そんな事を呟くもので、一体どうしたと小首を傾げた一刀。
「何が」
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