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一刀の言葉に、錦は安心して笑う。
「有り難う……んむっ?!」
安堵した次の瞬間であった。一刀が錦の唇を塞いだのだ。錦の唇を味わい、次は首筋を。既に衣の帯も解かれてしまった。忍ばされた手に跳ねる体、制しようと力無く抗うが一刀は止まらない。
「あっ、んっ……やっ……や、だっ……灯り……っ」
何時もは、一刀の譲歩で御帳の中の灯りひとつだけにしてくれるが、今宵は一刀がかなり早かった事もあり、照らす灯りが多く用意されている。其の中、肢体を晒され淫らにされていく錦は、潤ませた瞳から涙を溢した。が。
「暗いと、幽鬼が来るぞ……?」
耳元で聞こえた低い声。其の言葉に、錦は一瞬息を飲んだ。
「そ、それ、は……あっ、あ、やぁ……やめ……!」
怯えながらも、快楽に溺れていく体。灯りの中で、惜しげ無く淫らな姿を晒す羞恥に、涙を流し顔を隠す錦。此の反応に、一刀は更に煽られるばかりであった。頭の隅で思ったのは、怪談も悪く無い、と。
帝より、濃厚な寵愛を頂いた后妃様。中々離して貰えず、最後は果てると同時位に、只ならぬ疲労感から眠りに付いてしまった処で、漸く帝がお許し下さったのだ。な、もので眠る時が何時もよりかなり早かった。
夜も深まった頃、一度目を覚ましてしまった錦。隣の一刀は、既に穏やかな寝息を立てている。当然だろう、かなり夜は深いのだから。部屋の灯りも既に消されてしまって、暗く静かな此の空間は、錦の脳裏に昼間の怪談を思い起こさせてしまった。此れではいけないと、眠る一刀の胸元へしがみつき、必死で面白く、莫迦莫迦しい事を思い出そうとするが、こんな時に限って全く思い浮かばない。池に佇む、水に濡れた女官の姿ばかりがちらつくのだ。
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