ブラウニーと朱南

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ブラウニーと朱南

 わたし、青頼朱南(あおよりしゅな)、二十二歳。  恋敵に敗れて田舎の祖母宅に都落ちしてきました。 「一度の失恋くらいで、新卒採用で就職した会社を半年で辞めるって?」 「シュナ、考え直しなよ」 「そうだよ。合コンで次の恋を見つけな。見つかるまで付き合ってやるから」  わたしの友人たちは口々にそう言って、一時的な感情に流されるな、と離職を思い留まらせようとした。  だがしかし。  恋に不慣れなわたしは頑張ったのだ。  恋敵が同じ部署の二年先輩と知っていても、わたしなりに恋愛成就を目指した。  女子大学出身の彼女のほうが一枚上手だった。わたしはまだまだ女性の魅力に欠けていた。  女性の魅力なんてわかんないっ!  姉よりも姉として慕っている十五歳上のいとこに、わたしはグチを聞いてもらった。 「いいところに電話してくれた!」  いとこがスマホの向こう側で叫んだ。 「人員確保できた!」  歓喜の大声を上げた。  三十七歳のいとこ、戸田智晶(ちあき)は、七年前から不妊治療をしていた。  思い通りの結果を得られず、春、治療をきっぱりとやめた。八月に店とサイトをオープンさせた。  そして先ごろ、めでたく妊娠した。  嬉しいが困った。  治療を中止して、祖母宅を利用して店舗ありのレディース服レンタルサービスを始めたばかりだった。  一緒に起業しようとしていた不妊治療仲間がレンタルショップを始める一ヶ月前に妊娠して、離脱していた。  バイトを雇って頑張っていた。  思いがけなく自然妊娠しました。  商品はたくさん購入してあります。  さあどうしよう。バイトさんは居てくれるが、責任者に何かアクシデントが起きると身動き取れなくなる。  そんなとき、わたしはいとこに一身上の都合で会社を辞めたと電話した。  ある意味、適材適所。  わたしも傷心を癒やしたかった。  そうして、わたしは祖母の葬儀以来、久しぶりに祖母宅にやってきた。引っ越し荷物の車は午後に来る。
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