ブラウニーと朱南

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 自称ブラウニーさんは、手を洗ってからコーヒーを出してくれた。  迷うことなく手際よくキッチンを使う様子は、いかにも本物のバイトっぽい。  わたしは美味いコーヒーに惑わされることなく自称ブラウニーさんの仕草を盗み見する。  大家族時代の名残の長いダイニングテーブルは、仕事用としても活用されている。  わたしがコーヒーをすすっている間、自称ブラウニーさんはサイト注文書をプリントアウトしている。  わたしの荷物が着いて一緒に二階の部屋まで運んでくれたあと、一階に置く物などを分けて片付けている間に、注文のレンタル服を箱詰めして、宅配業者に集荷連絡をしていた。  何ごとにも手慣れている。  作業風景を見ていると、確かに彼はバイトとしてこの店に勤めていると納得できる。  だが彼は男性で、智晶ちゃんは女性で。祖母宅の古風な雑貨店をリノベーションして開店したとはいえ。  夫持ちの智晶ちゃんが昼間だけとはいえ、男と二人きりで仕事をするのはいかがなものか。  そういうところが堅い。  面白味がなくて振られたんだ。  友だちの声が聞こえてくる気がした。  男女各一名で回している営業所もある。日本のどこにでもある。  いちいち勘繰っていたら仕事にならない。と思ってもみる。  だけどさ。  普通のおっさんならともかく。  ムダにカッコいい。  智晶ちゃんがふらふらしなかったのは開店したばかりで、慣れて他に目を向ける頃に、宝物が授かったからだ。  と、あれこれ考えても仕方ない。  自称ブラウニーさんはこの店のバイト。智晶ちゃんの旦那様が知っていたかどうかはわからないが。  ブラウニーさんのバイト時間が終わったら智晶ちゃんのお見舞いに行こう。  自称ブラウニーさんの取り扱い方法を聞いておこう。
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