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幸せを招く服
「どうしたんだろ。俺、おまえから目が離せないんだ」
おまえかあの子か。
じつは迷っていた。
バカ正直に彼がしゃべる。
愚直すぎる彼。そんなところも大好きだ。
でも。
やった!
わたしの脳内。
サンバカーニバルが始まる。
ピーピージャカジャカ。
大騒音が体内で響く。
体細胞が踊っている。
あの子に勝った!
実際に踊りたくなるのをぐっと我慢する。ここは勝負時。対応を間違えてはいけない。
「わたしと二股かけていた?」
ちょっとすねたように訊いてみる。
「俺とおまえって、お付き合いしている?」
彼も訊く。
問われて、わたしは小首をかしげる。
「あの子とは付き合っていたの?」
「おまえと同じく、二人だけでご飯食べに行ったことはあるが。微妙なとこだな」
だから、と彼が言った。
「この直感があっているか、お試しにもう一度、デートしてくれると嬉しい」
よっしゃあぁっ。
わたしは腰あたりで小さくガッツポーズをした。
じつはわたしも直感していたのだ。
この服。姉に黙って借りてきた。
これを着ていくとうまくいく。
服を見て、わたしは確信した。
あとで姉からケンカをふっかけられようが、恋成就のためなら受けて立つつもりでいた。
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