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サラリーマンの休日
電話が鳴った。
独り暮らしのサラリーマン北川充(きたがわ みちる)は電話の音で起きた。今日は休日で春の暖かさに負けて中々布団から出れずにいたら、もうお昼近かった。鳴り止まないスマホを見ると、母親からだった。
「充、元気かい」
「元気だよ。母さんは?」
「大丈夫だよ。ねぇ、充、今度お隣のケンちゃん結婚するんだって。あんたもそろそろどうなの。30になったんだし」
「ああそうね。ちょっと用事があるからまたね」
充は適当にあしらって電話を切った。
「いつか言わなきゃな……」
完全に目が覚めた充はパンと紅茶を取ると、出かける準備を始めた。歯磨きをし、顔を洗った。
「全身脱毛脱毛すると楽でいい」
そう言って鏡を見た充は艶々した顎を撫で、いつも気になって触る右頬の少し大きめの黒子を触った。それからメイクをして、ワンピースを来て、茶髪ロングのウィッグをかぶった。
「ウィッグも楽でいい」
鏡に微笑みかけ、イヤリングをした。そして、取り外しできる真っ赤なネイルチップを爪に着けた。
「よしと」
華奢な充は違和感無く女性化した。充は鏡の前の自分に満足すると、トートバッグを持ってパンプスを履き、外へ出ていった。
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