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「ふわぁ~。ヒマだなぁ。誰か遊び相手はいないかなぁ……」
江戸(今の東京)のとある屋敷の縁側で、一人の男の子がだら~んと寝転んでいました。
男の子はド派手で高級そうな羽織と袴を身にまとい、これぞまさしく「ザ・殿さま」といったいでたちです。もちろん、頭はピストル……じゃねぇや、チョンマゲでござる。
ふぅ~む。物語の語り手である拙者がせっかくかっこよく紹介してあげようと思ったのに、のっけからやる気がなさそうですぞ、この主人公。そんなに暇だったら、家来でも呼んで遊びにつき合わせたらいいでしょうに。
「誰か遊び相手は……あっ、聡太。オレと将棋しようよ」
「もうしわけありません、若さま。それがし、大事な用がありまして……」
「そうか、だったら仕方ないな。……おい、六兵衛。オレと相撲をしよう」
「え? す、相撲でござるか? もうしわけありません。朝から右ひざが痛くて相撲はできそうにありませぬ……」
「……などと言いつつ、左ひざをおさえながら逃げていったぞ、あいつ。ちぇっ、どいつもこいつも殿さまのオレを無視するんだから嫌になっちゃうよなぁ。もぐもぐ……」
家来たちに遊びの誘いを断られてしまった若殿さまは、ふてくされながら大きなまんじゅうをふたつ、みっつとやけ食いしました。
おやおや。どうやらこの若さま、家来たちにさけられているみたいですなぁ。殿さまなのにぼっち属性とは、これいかに?
「オレをさけているのは家来だけじゃない。身の回りの世話をしてくれる女中たちも、何だかオレによそよそしいんだ。殿さまになるために父上と母上がいないこの屋敷につれてこられたのが5歳の時で、8年間ずーっとこんな感じだ」
ぼっちで寂しいせいか独り言が多いですね、この若殿さま。せっかく顔は美形なのに、ちょっと残念。そんなことじゃ、女の子にモテないぞ!
まだブツブツと独り言を言っているみたいなので、その間にこの若殿さまが何者なのか紹介しましょう。
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