覚悟のふたり

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 亮治の不安は、なんとなくわかるような気がした。溝口は一ヶ月もの間、亮治の面倒を見てくれたのだ。どんな生活を二人でしてきたのか知らないし、想像もしたくない。  けれど、性癖から派生する様々な問題のせいで落ち着かない日々を過ごしてきた亮治である。溝口との生活は、少なくとも安定感のあるものだったのかもしれない。  だからこそ、ぶち当たる壁が多すぎる弟との恋など忘れて、溝口を好きになれたらどんなにいいかと、考えていたところなのかもしれない。  亮治は弱い。いや、強い人間など、どこにいるのだろう。楽な方に身を置きたいと思うのは、当然だ。  正直、真人も不安だった。明日には気が変わって、亮治は今度こそ、こちらの手を離してくるかもしれないのだ。  だけど、真人は亮治の手を強く握り返し、泣き腫らした男の目をしっかり見て言った。 「好きだよ、亮治。本当に好きだ」 「……っ」  まだ不安はあったけれど、不安を抱き続けてもしょうがない。真人は名残惜しい感触を手放し、玄関のドアを開けて、外へと出る。  ガチャンと閉じたドアの前で、たまらずしゃがみ込んだ。  神様。  思わず祈るように顔の前で手を組み、ぎゅっと目をつぶる。  ――早く明日にしてください。  心の中で、何度も何度も願った。けれど、願えば願うほど、時間はゆるやかな濁流のように流れていくように思えて、仕方なかった。
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