哀れな男の一目惚れ

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「顧客のリストが溢れかえった時期があっただろ? 覚えているか?」 「覚えてますけど」 「そのときに、何人か本部以外の社員にもリスト整理を頼んでいたんだ。そのとき、山崎に回ったのが電話掛けの仕事。アポを取れるようにひたすら電話をする仕事だ。新宿支店は仕事も多いのに、明るくハキハキとしているからって、本部は仕事の多い山崎にも頼んだんだよ。しかも、一番望みの薄い客だけ頼んでな」 少しずつ、思い出してきた。 そういえば、うちにアポを繋いでくれた人がいた。 それが山崎さんだったようだ。 「アポを繋いだ顧客は、新人の純粋な絵画を求めていただろ? それならと、ネットや各支店のチラシを見て、あの子が武蔵小杉を勧めたわけだ」 あれ? この支店は新人の絵は置かない。なんで、武蔵小杉なんだ? 横浜支店の方が新人の絵があるんじゃね? 「で、当時、お前がなにも確認せずにアポをとった山崎にメールをした。それがこれな」
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