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日常
「おいっ、離せっ」
オラッ、と叫んで、後ろに引っ付く京夜の腹に左肘をめり込ませた。
「ぐあっ!」
ふっ、ざまぁねーな。
京夜は左肘が直撃した腹を抱え、真人から離れる。その隙に足をバタバタさせながら、ズボンを履こうとしている可愛い息子を立たせ、履くのを手伝ってやる。
「よし、斗真できたぞー」
「あいがと。とちゃ、ぱぱは?」
父譲りの白い肌と黒い目。だが俺に似たのか髪は少し茶色い。
初め生まれた時は名前で呼ばせようかと思ったが(実際、男同士だとそれが多い)、京夜がそれを許さなかった。
ましゃとー!って呼んで欲しかったなー、。
そんな息子はあんな父親でも心配する。
お前は偉いなー。
「んー?どうしたんだろうな?きっと斗真が可愛すぎて悶えてるんだよー」
グリグリ~っと柔らかいお腹に顔を埋める。
はぁー、極楽。
後ろからは、んなわけあるかっ、と何やら苦しげな声が聞こえてくる。だが、構っている暇はない。平日の朝の忙しさは馬鹿にできない。
幼稚園専用の帽子を斗真に渡し、バックのチャックを閉めて、水筒と一緒に肩に掛けてやる。
「よし。今日もいけるか?斗真!」
「いけるよ!とちゃ!」
毎朝恒例の掛声をかけ、玄関に向かう。
京夜はまだ床に土下座してやがる。
「おい、行くぞ」
邪魔ったらしょうがないといった風に言うと
「ちゅーしてくれたら良い」
とほざけたことを抜かしやがった。
「じゃ良いわ。斗真、行ってらっしゃい」
「いってきます!」
ちゅっと斗真には頬にキスをあげて、家を出る。幼稚園の送迎バスは俺達の家の前にあるバス停に止まる。
バスに一緒に乗る先生によろしくお願いします。と預け、バスの中に入った斗真に手を振った。
あいつこないのかよ、、、。
「ちょっと待ったー!」
約束破りやがってと、斗真の可愛い笑顔を硝子越しに見ながら思っていたら、京夜が向かいから走ってきた。
「斗真ー、頑張れよ」
さりげなく俺の腰に腕を回し、ひらひらと手を振る。
はぁ、1日が、始まったな。
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