一奇 二百二十七年目(中)

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 男はナイフを離すと、陽名世を寝ている体制から立たせて再び、ナイフを突きつけた。 「じゃ、行くぞ」 「はい...」  陽名世は渋々、返事をした。  陽名世と男が丹波の元へ向かおうと、引き戸を開けようとしたときだった。 引き戸が開いた。 「ちょっと、うるさいわよ!」  真叶だった。男の大声がうるさかったから起きたのだろう。 「貴方、誰なの?......陽名世!」 「おい、静かにしろ!そうしないと、こいつ殺すぞ」  真叶は焦っていた。やはり、寝起きだからか頭は回らない。  陽名世はどうにかして真叶のことを逃がしたいが、為す術もなかった。 「陽名世のこと離して!貴方、何が目的なの!」 「俺の事は良いから逃げ」 「うるせぇって、言ってんだろ!もう、いいわ......。 。お前ら、全員殺してゆっくり探すことにするわ」  男はそう言って、口角を上げた。その表現は凄く楽しそうだった。  陽名世の首筋にナイフの刃先が当たる。  真叶は男の表情が恐ろしく、手足が動かなかった。 「あー、人殺すの初めてだからなんかドキドキするなー。......おし、一思いに行くか!」  陽名世は死ぬ、そう思って目を閉じた。  その時、だった。 「ぐほっ!」  男が倒れたのだ。
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