一奇 二百二十七年目(下)

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「本当にすみません。まさか、こんな山奥に強盗が入るとは思わなくて、戸締りするのを怠っていました......」 「まあまあ......。助かったんで大丈夫ですよ」 「寿命が十年縮んだわ......」  結果的に、陽名世と真叶は殺されずに助かった。  陽名世の首筋にナイフの刃先が当たったとき、(伊那)が男の頭にクリティカルヒットしたのだ。それにより男は気絶して倒れた。その後、丹波を呼び、警察に通報してと色々と大変であった。 「......伊那は陽名世のことを呪っている訳じゃ無さそうね」 「そうですね。伊那さんは俺のことを助けてくれた。ありがとう......」  陽名世は(伊那)を抱きしめた。一昨日まではあんなに恐れていた存在だったのに、今は好きとまでは行かないが大事な存在になっていた。 「じゃあ、夢を繋げてみましょう」 「え、死にたくないです」 「大丈夫よ。伊那も快く受け入れてくれるわ」  真叶はにこやかに微笑んだ。  陽名世はその彼女の笑顔に免じてその言葉を信じようと思った。 「俺も見てもいいですか?」  丹波はこういうのに興味があるらしく、近寄ってきた。 「ええ。布団、借りてもいいかしら?」 「どうぞ」 「陽名世、寝てちょうだい」  布団に寝ると、真叶が枕元に(伊那)を置いた。 「いい?夢の中に入ったら伊那のことを考えながら扉をイメージするの。そうすると、扉が現れるからその扉をゆっくり開けるのよ。そうしたら、伊那の世界に繋がるわ」  二人に見守られながら、陽名世は目を閉じた。夜中に強盗に起こされたからか、すぐに眠気が襲ってきた。 「おやすみ、陽名世」  
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