先生の翼

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先生の翼

 きっかけは交通事故に遭ったこと。  病院の小児病棟に入院することになった。  私は不思議なものを  目にするようになっていた。  それは、いくつもの翼。  翼をもっているのは、  きまって病院の先生や看護師さん達。 「おはよう、調子はどう?」  そうやって毎朝、  様子を見に来てくれる主治医の先生は、  誰よりも一番きれいで大きい  真っ白な翼をもっている。  そんな彼と仲の良い  ヒーロー好きの先生の翼は、  燃えるように赤い翼。  その他にも、  毎日たくさんの翼を見る。  研修中の先生達は、  みんなまだ小さい翼。  これから少しずつ  大きくなっていくんだろうな。  そう思うとワクワクしてくる。  看護師さん達は、  まるくてかわいい翼。  男の先生の翼は、  私達患者を守るかのように  大きくてしっかりしてる。  女の先生の翼は、  私達患者を安心できるように  包み込んでくれるかのように  やわらかい。  白、赤、青、黄色、緑…。  色もそれぞれの先生によって違う。 「ねぇ先生、私もいつか先生みたいにきれいな翼もてるかな」  退院間近、先生に聞いてみた。  そしたら先生、微笑んでこう言ったんだ。  「そうだね、きっともてるよ」  だから、私は決めたんだ。  将来、病院の先生になるって…。  私は、どんな翼をもっているかな。
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