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…え、これ変じゃね?
だんだん嫌な予感がしてきた。
生き物がダメなら植物は? と、木の実やキノコ類を探したけど、見つけられたのは真っ赤な傘に黒い水玉模様の、見るからに毒々しいキノコばかり。
都会育ちのオレでも、食べられる野生のキノコってのは、たいていが茶色系の地味なものだって認識はある。料理しないから名前はあやふやだけど。カラフルなやつはだいたい食べちゃいけないやつだよな。でも他にめぼしい食料は無く。
毒キノコのまわりをぐるぐる歩きながら葛藤した。
さすがにこれはヤバイやつだよな? ちょっと色がな~微妙だな。腹へったな~。どうしよ。少しくらいなら大丈夫かな。くんくん。うん。においはとくに無い。目をつぶれば全然食べれそう。…え? 食べ…ちゃう? 食べてみちゃう? えー……。ほかに食べれそうなものは見つからないし…いってみる?
なーんてことをぐだぐだ考えていたら、とつぜん後ろのしげみがガサッと音をたてた。完ぺきに油断してたからビックリして飛び上がっちゃったよ!
もしかして食料!?
バッと振り返ったその先にいたのは小動物──ではなかった。え、うそ。
期待にふるえたオレは、今度は恐怖にふるえあがった。瞳孔がくわっと広がるのを感じた。
しげみから現れたのは真っ黒い大きなケモノだった。
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