運命の出会い

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銀狼がウォフッと一声吠えた。威嚇音とは別の落ち着いた声色だった。黒狐もオレを口に咥えたままケンッと吠えた。いやほんと器用だな! 声色同様殺気をおさえて落ち着いた雰囲気の銀狼と、かなり不機嫌そうな黒狐の間でしばらくウォフッとケンッの応酬が続いた。 いつの間にかうなり声も毛が逆立つような緊張感も消えている。 え、なにこれ。もしかして話し合いとかしてるわけ? 獣なのに? さっきあれだけ睨みあってたのに一体なんで……。てか、オレだけ何言ってるかわかんないとかなんか不公平じゃね? つまりあれか? こういうことか? 銀「いやがってるだろう、無理強いはよくないな。ウォフッ」 黒「うるせー、テメェにゃ関係ねぇだろ。ケンッ」 …みたいなやりとりをしてるのか? コイツらは。 少女漫画にありがちな展開だよな。いや、オレら全員オスだしむしろBL的ストーリーか?  まぁ、どっちにしろオレの立ち位置だったらセリフは決まってる。 「やめろよふたりともッ。っていうかそもそもオレ男だし…女扱いすんなよ!」 と、威勢よく言ったつもりだった。なんなら顔もキリッとさせた。 けど。 オレの口から出たのはニ~とかミ~とかいう甘ったれた声音。っていうか美声…! それどころじゃないってのにあまりの歓喜に体がふるえたよ。猫好きにはたまらない子猫ヴォイス! あぁッ。 自分で自分の声を絶賛していたその時、それまで黒狐にばかり意識をむけていた銀狼とまともに目が合った。 途端。体がブルッとふるえてボッとしっぽが太くなった。 オレじゃない。黒狐でもない。銀狼だ。
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