桃色のわたしたち

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 今日から中学3年生になった。  長らくの静けさに同調した冷たい教室に一番乗りでやってきた私は、黒板に張り出された座席表の「酒井菜々」の名前に従ってちょこんと椅子に座っていた。  ちょっと、早く来すぎちゃった……。  冷たい時間がゆっくりと流れるなか、私はそう思って朝の光が豊かな明るさを机上に届ける雰囲気をただじっと味わっていた時だった。  ガラガラ―  教室後方の扉が開かれた音に合わせて振り返ると、スローモーションのような世界であなたと目があった。  由衣ちゃん、あなただ。
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