1307人が本棚に入れています
本棚に追加
するとグウッとヒロキの背中が大きく波うった。えずき、喉元までせり上がったものを飲み下し、またウッと苦しげに呻いている。
吐くのを我慢しているのか、うまく出せないのかわからないが、見ていられないほど辛そうだった。
「吐け、ヒロキ。そのほうが楽になれる」
何度か空えずきを繰り返してヒロキがようやく嘔吐した。少量の吐瀉物を数回にわけて吐き出す。
出てきたのは毛玉だった。毛繕いにより飲み込んだ毛が胃に溜まり、うまく消化できなかったのだろう。
これまではアランが毎日体を洗いブラッシングしていたため、ヒロキは毛玉をあまり吐いたことがなかった。それがこの三週間でいっきに蓄積されたのだろう。
異物や血が混じっていないことを確認し、アランは安堵した。
ようやく落ち着いたらしいヒロキがふらふらとアランの膝にすり寄ってきた。抱き上げて浴室へ向かい、濡らしたタオルで汚れた口元を清めてやる。
水を飲ませると「ナァ」とかすかに鳴いた。ありがとうと言っているのだろう。
「……そばにいてやれなくてすまない」
そっと抱きしめたヒロキは3週間前より少し骨張っているようだった。申し訳なさと愛しさに胸がしめつけられる。
せいいっぱい伸びあがり、アランのほほに頬をこすりつけるヒロキから、ゴロゴロと大きな音がしてきた。久しぶりの愛しいぬくもりと懐かしい響きに、アランの心は満たされ、忘れていた火照りを呼び起こされた。
最初のコメントを投稿しよう!