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─── そこか!
ひときわ高く跳躍し、密集したしげみを飛び越えた。焦るアランの目が最初にとらえたのは、黒い獣だった。このあたりでは見かけない黒狐だ。その黒狐が、地面に捕らえたなにかに覆い被さっている。
そしてふりしぼるような絶望に満ちた鳴き声───
「やめろ! いますぐはなせ!!」
捕われているのが自分のツガイであると気づいた瞬間、アランのなかで激しい怒りが爆発した。激情のまま黒狐に体当たりをし、ツガイから引き離そうとしたが、黒狐は攻撃されてもツガイをはなそうとしなかった。体勢を立て直し、アランを睨み付け威嚇してくる。その口には子猫がぶらさがっていた。
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