子猫

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朝、森へ飛び出していった王が城へ戻ったのは、その日の昼過ぎだった。 待ちに待ったツガイとの出逢い──しかも運命の相手だ。仲むつまじく寄り添い、その顔はきっと満足げに微笑んでいるに違いない。 そう思っていたのだが── 王はザラスの予想に反してかなり不機嫌なようすだった。 騎馬で帰還した王は、城門前で出迎える大勢の臣下にかすかにうなずいてみせると、下馬せずそのまま吊り橋を駆け抜け入城していった。 いつもならばザラスのそばに降り立ち、なにがしか言葉を交わすのだが、チラリとも視線を寄越さなかった。思わず横に立つガレウスと顔を見合わせる。 王は上半身にかすかに汚れた上着だけをまとっていた。中に着ていたはずの白いドレスシャツを脱ぎ、それで何かを大事そうに包んでいる。きっとツガイ相手なのだろうが、まるで誰の目にも触れさせまいとしているかのようだった。
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