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「ザラス殿は王の発言をどう思われますか」
今度は騎士団長がザラスに水を向けた。クレールの森を守護する騎士団の長としては、異変と聞いてはいてもたってもいられないのだろう。王にはとめられたが、命が下ればいつでも出立できるようにと探索隊の編成を部下に指示していた。
長いあご髭をゆっくり撫でながら、ザラスは先程の王の様子を思い返した。
朝議の間に現れたときの考え込む表情。そわそわと落ちつかない様子と、去り際の苛立ち。そして、強情な物言いと隠しきれない焦燥感──
─── あれはもしや
ザラスはかすかに人差し指をまげてみせた。腰を折り顔を寄せた騎士団長以外に聞かれぬようささやく。
「王はツガイさまの存在を察知したのではないでしょうか…」
その言葉に騎士団長は目を見張った。ゆっくり起き上がると筋肉の盛り上がった腕を組んで、無言で小さく頷く。──たしかに。
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