1307人が本棚に入れています
本棚に追加
「何事だ」
「王ならびに王医様に申し上げます。ツガイ様のご様子がすぐれないため、王医様におかれましては、いそぎ私室へ戻られたし、とのことでございます」
「なんと…!」
息を呑む老医師より先に、アランは椅子から立ち上がっていた。
「王よ、どこへ行かれます!」
老医師の声を背に、アランは駆け出していた。
執務室から私室はそう離れてはいない。すぐにたどり着いた私室の前では、厳しい顔つきのガレウスが警護の騎士と共に王医の到着を待っていた。足音に振り返り、やってきたのがアランだと見てとるとサッと扉の前に立ちふさがる。
「どけ、ガレウス!」
「お静まりください。……今はお通しするわけにはまいりません」
カッとなり握ったこぶしを震わせるアランに、ガレウスが目を細めた。かすかに首を振ってくるが、冷静な対応にかえって苛立ちが増した。
ザアッとアランの足元から強風が巻きおこり、怒気に気圧され護衛の騎士がたまらず床に這いつくばった。アランからの威圧感に耐えられず、浅い呼吸に苦しんでいる。
「そこをどけ!」
「なりません」
最初のコメントを投稿しよう!