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激昂するアランにも動じず、ガレウスは両腕を組んで立ちはだかっていたが、私室の中からフィリーの「ヒロキ様…!」という悲鳴が聞こえハッと気が逸れた。
その隙を見逃さず、アランはすり抜けるように扉を開け中に入った。
居間に二人の姿がないのを素早く見てとると、寝室の扉が開いていたためそこへ駆け込んだ。ガレウスがすぐ後ろから追ってくる。
朝だというのにカーテンを閉めたままの寝室は薄暗かった。その床にヒロキがうずくまっていた。
そばに付き添うフィリーがアランの姿を認めハッと息を呑んだが、構わずヒロキのそばに膝をつく。
「ヒロキ……!」
ヒロキは苦しそうな様子で、小刻みに体を揺らしていた。名前を呼んでも反応せず、背中に触れると嫌がりふらふらと離れていこうとする。
視界のすみでガレウスがフィリーを引き寄せ寝室から連れ出していくのがわかったが、アランはそれどころではなかった。ハッハッと浅い呼吸を繰り返すヒロキから目が離せない。少しあいた小さな口からは舌が出ていた。暑いと口呼吸をする犬科の動物とは違い、猫の口呼吸は異常事態の証だ。
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