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この世界に住まう獣人たちはみな、ツガイ相手を探し求めて生きている。
同種のみならず、異種であっても、お互いが好ましいと思えればツガイ関係は成立する。
たいていは出会った瞬間に心惹かれ合うものだが、アランの様子はそれとは少し違うようだった。
姿を目にしたわけでもなく、声を聞いたわけでもなく、匂いを嗅ぎとったわけでもなく。ましてや気配さえ読めないほどの距離を越えて、心を揺さぶられたのだとしたら。
それはつまり、唯一無二の《運命》の相手ということだ。
─── 王は本能に導かれ、運命のツガイを迎えに行ったに違いない…
同じ結論に至ったらしい騎士団長と目が合い、静かに笑みを交わす。
アランが無事にツガイ相手を連れて帰ってこれるように、ザラスは心のなかでそっと神に祈りを捧げた。
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