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城を飛び出したアランは森の中をひた走っていた。
木立をすり抜けいくつもの小川を飛び越え、ある一点を目指し猛然と突き進んでいた。
なぜこれほどまでに心がざわめくのか、もうわかっていた。本能が導くその先にツガイがいるのだ。
唯一無二の《運命》の相手が。
─── しかし
森のなかは妙に静まり返っていた。いつもなら感じ取れる小動物の気配がいっさいない。
アランの縄張テリトリーりであるクレールの森に、よそ者の α(アルファ) がまぎれ込んでいるに違いない。しかも恐ろしいことに、自分のツガイのすぐそばにいるようだ。
その時だった。かすかな鳴き声をとらえたのは。恐怖に怯えた声にアランはゾッとした。
自分の大事なツガイに危機が迫っている……!
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