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なんで嫌いかって
たいていの人のことは嫌いになったりしないと自負しているわたしだけれど、しかし山本和真だけは敵である。山本は、わたしの親友・美月をたぶらかし、わたしから奪った張本人の、最低最悪なイヤなやつだからだ。
わたしと美月は昔から、ずっとずっと一緒だった。悲しみは半分こに、楽しいことは2倍に。つき並みだけど 、美月といると、本当に心の底から、そう感じられた。時には家族よりも、お互いを優先させる仲。当然、何があっても、美月がわたしをほったらかしにすることはないーーーそう思っていたのに。
3ヶ月前の新学期。クラス替えで同じクラスになって2人が出会ってから、わたし達の歯車は狂ってしまった。
前までは、
「この前食べたパンケーキがすっごいおいしかったんだよ。ナミにも食べさせたかった」
「きのうの小テスト本当に最悪でさ~…お母さんにバレたら、怒られるどころの話じゃないよ」
「ねえ聞いてナミ!!英語の高田がほんとに最悪なの!!いつも順番通りに当ててくるくせに、今日だけいきなり変えてきてさ!!!予習やってたとこずれちゃって大恥かいたよ」
などなど、とにかく何でも話してくれた美月。そのたびにわたしは、
「へー、そんなにおいしいパンケーキだったんだ。食べてみたかったな」
「それはたいへんだったね。まあ、次がんばればいいじゃない?」
「美月にそんな思いをさせるなんて!!高田のやつ本当に許せないね」
と、ちょっとだけお姉さんぶって、美月を励ましたりなぐさめたりしたものだ。
それなのに、山本と同じクラスになってからは、どうだ。美月ときたら、
「ねえ、山本くんって野球部なんだって。今度練習見に行ってみようかなー」
「山本くんね、この前数学のとき爆睡しててさ。寝癖が前髪について…ちょっと、かわいかったんだー」
「ねえねえ、今度、練習試合があるらしいの。こっそり応援に行っても大丈夫だと思う?」
などなど、気づけば山本の話ばかり。これにはわたしも、
「……」
はしゃぐ美月に合わせて一緒にはしゃいであげる、ということができなくて、ちょっとそっけない態度をとってしまった。それは、わたしも悪いと思うし、反省している。
けれどそのうちに美月は、わたしの機嫌をうかがうのをやめ、相談もやめ、1人でも練習を見に行き、寝癖がついた山本をからかい、試合を応援しに行って、あれよあれよというまに、二人は付き合うことになってしまったのだった。それは、正直、許せなかった。
無論、わたしが許せないのは、美月ではなく、山本のほうだけれど。
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