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海月の話#1話。【フワリ、フワリ、フワフワリ】
「ねー!ユキくん!」
「なぁに?コウくん!」
「みてみて!あれ!」
「わー!!くらげさんだ!」
「きれいだね!!」
「ねぇねぇユキくん!」
「何?」
「どうして僕らは違っちゃったんだろうね。」
「…さーな。」
「…高校いって、彼女とかできて関わることがなくなったりしても、幼馴染みとして覚えておけよ。」
「なら、お前も忘れんなよ。幼馴染みの事。」
「あったり前‼」
「まぁな。」
ピー…ピー…ピー…
「んぅ…。」
寝てたのか…
「…おはよう、コウ。」
「…。」
コウは高校卒業後、大学にも真面目に通っていた。
大学にも慣れた頃だった。
トラックに、跳ねられた。
もう一年位だろうか、こうして動かず息をしているだけの彼を見ているのは。
心電図の音がなければ生きているかも分からない。
「早く、起きてくれよ。コウ。」
「…。」
いつの日か、起きてくれることを信じて、
「はぁ…」
「…ん…。」
「…ん?」
「…。」
「コウ‼」
飛び付くようにナースコールを押す。
「どうされました?」
「起きたんです!!」
「わ、分かりました!い、今、行きますね!!」
「お願いします!」
起きた…、起きたんだ。
「福枝恒樹さん、自分の事お分かりになりますか?」
「…ここ、…どこですか…」
「病院だよ、」
「…あなたは…?」
「え、…」
「いやぁ…すみません。お待たせしました。」
「ぁ…先生…」
「こ、こないで…」
「大丈夫ですよ、落ち着いて下さい。」
「すみません…。彼の家族に連絡してきます。」
「あ、幸斗さん!」
「……忘れ、られた……?」
「もしもし、」
「ありゃ!ゆきくん!」
「こんにちわ、コウの母さん。」
「はい、こんにちわ。どうかしたの?」
「…コウが、目を覚ましました。」
「本当かい…?」
「…この事に関して、嘘をついても意味がないですよ。」
「そうよね、ありがとう。今病院に向かうわね。」
「はい、待ってます。」
「はい。」
プーップーッ…
戻らなきゃ、
足取りが、かなり重い
他人を見るような目
他人と話すような目
…怖い。
でも。一人にもさせられないから。
それに帰ったら、
いつもの目で
いつもの声で
俺のことを呼んでくれるかもしれない。
名前を呼んで…
「帰りました。」
「…」
くれない、か。
「あ、幸斗さん。お帰りなさい。」
「今から、来るそうです。」
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