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ある日僕と弟は、とうさんに頼まれて
とうさんの父に贈り物を持って行くことになった。
弟は生まれて間もない羊の子を連れて、鼻歌を歌いながら僕の前を歩く。
僕は麦やいろんな収穫物をかご一杯に乗せて、重い足取りでついてゆく。
弟は時々立ち止まりながら、僕が追いつくのを待っている。
子羊は自分で歩くのだから、少し手伝おうという気もないのか・・。
僕はものも言わずただ歩いた。
とうさんの父は公平だと聞いていた。
きっとこの僕の苦労や大変さを解ってくれるだろう。
やっとたどり着き、僕と弟は贈り物を置いた。
とうさんの父は大変喜んだ・・・子羊にだ。
僕の育て上げた麦には見向きもされなかった。
何故だ・・。
どうして弟ばかりが・・。
伏せた顔に涙が滲んだ。
真っ黒な龍のような大きなものが、胸の中いっぱいに溢れてくる。
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